没後20年 特別展 星野道夫の旅
2018年7月14日(土)― 9月30日(日)
2018年7月14日(土)― 9月30日(日)
展覧会概要 1978年にアラスカに移り住み、20年近くにわたり極北紀行を重ねた星野道夫(1952-1996)。大自然が見せる多様な姿をカメラで追い続けると同時に、言葉により思索を深めた星野が残した仕事は、今日まで多くの人々を魅了し、変遷する自然と文明の関係を問いかけ、現代に生きるとは何かを改めて考えさせます。 本展では、ありのままの自然の姿が写し取られた「マスターピース」から、過酷な環境下で脈々と続く「生命のつながり」、極北に暮らす人々の精神性が見出された「神話の世界」まで、星野の写真と言葉による物語の世界が展示空間に立ち現れます。加えて、現地の取材で使用されたカメラやカヤック、貴重な記録映像や自筆原稿などの資料を展示し、星野が伝えたかった極北の世界へとみなさまを誘います。 「目に見えるものに価値を置く社会と、見えないものに価値を置くことができる社会の違いをぼくは思った。そしてたまらなく後者の思想に魅かれるのだった。夜の闇の中で、姿の見えぬ生命の気配が、より根源的であるように。」 『森と氷河と鯨』(世界文化社)より |
クジラの骨の遺跡とベーリング海に浮かぶ半月(ロシア、チュコト半島)
作家略歴
1952年千葉県市川市生まれ。1976年慶應義塾大学経済学部卒業。動物写真の第一人者田中光常氏の助手を2年間務める。1978年米国・アラスカ大学野生動物管理学部入学。1986年アニマ賞受賞。1990年木村伊兵衛写真賞受賞。1996年ロシア・カムチャツカ半島での取材中ヒグマの事故により急逝。1999年日本写真協会賞特別賞受賞。1980年代より『National Geographic』や『アニマ』、『週刊朝日』など国内外の雑誌に写真や紀行文をアラスカより寄稿。さらに『イニュニック・生命』(1993年発表)、『旅をする木』(1994)、『森と氷河と鯨』(1996)など数々の書籍を上梓。没後も現在まで展覧会開催や書籍刊行が続いている。
カリブーの季節移動を待つ星野道夫 |
1952年 千葉県市川市に生まれる 1968年 慶應義塾高等学校入学 1969年 移民船アルゼンチナ丸でロサンゼルスへ 約2ヶ月間、アメリカを一人旅する 1971年 慶應義塾大学経済学部入学、探検部に入る 1973年 アラスカ・シシュマレフ村でエスキモーの家族と一夏を過ごす 1976年 慶應義塾大学を卒業 動物写真の第一人者・田中光常氏の助手をはじめる(以後2年間務める) 1978年 アラスカ大学受験のため、シアトルの英語学校に通う アラスカ大学野生動物管理学部入学(4年間学ぶ) 1986年 第3回アニマ賞受賞(「グリズリー」) 1990年 第15回木村伊兵衛写真賞受賞(『週刊朝日』連載) 1993年 結婚 1996年 ロシア・カムチャツカ半島クリル湖へテレビ番組の取材に同行 8月8日、ヒグマの事故により急逝 1999年 1999年度日本写真協会賞・特別賞受賞 |
「大学の卒業が近づき、私は自分の一生の仕事を決めなければならなかった。
何か自然に関わる仕事がしたい。もう一度アラスカに戻りたい……。それだけがはっきりしていた。初めて写真というものを意識した。アラスカの自然をテーマに、写真を通して自分の考えていることを表現していけるだろうか。そのとき初めて、自然写真というものとの関わりが始まったと思う。つまり私の場合、写真がずっと後で、まず自然があった。」
『FIELD&STREAM』(ソニーマガジンズ)より
展覧会の見どころ
写真と言葉によりつくりあげられる星野の世界観を提示
極北のありのままの自然の姿をカメラで追いかけた星野。写真に加えて、紀行の途上で重ねられた思索から数々の言葉が紡がれました。本展では、星野の著作物から抜粋された言葉を写真に併置し、立ち上がる星野の世界観を堪能いただけます。
最後に伝えたかった精神的な世界を紹介
20年近くにわたる紀行で出会った極北の原住民との交流を経て、現代社会では忘れ去られつつある価値観を見出した星野は、彼らの暮らしを精力的に取材しました。極北の自然を超え人間の精神性をも捉える、星野の鋭敏な感性と広い視野が浮かび上がります。
星野作品が生まれた背景を多様な資料から紹介
当時取材に携行されたカメラ、移動に使用されたカヤック、本人に密着したドキュメンタリー映像、自筆原稿や掲載雑誌などを通して、極北で生まれた創作の背景や当時大きく発展した自然写真分野での星野の活躍に迫ります。
「ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい。」
『森と氷河と鯨』(世界文化社)より
何か自然に関わる仕事がしたい。もう一度アラスカに戻りたい……。それだけがはっきりしていた。初めて写真というものを意識した。アラスカの自然をテーマに、写真を通して自分の考えていることを表現していけるだろうか。そのとき初めて、自然写真というものとの関わりが始まったと思う。つまり私の場合、写真がずっと後で、まず自然があった。」
『FIELD&STREAM』(ソニーマガジンズ)より
展覧会の見どころ
写真と言葉によりつくりあげられる星野の世界観を提示
極北のありのままの自然の姿をカメラで追いかけた星野。写真に加えて、紀行の途上で重ねられた思索から数々の言葉が紡がれました。本展では、星野の著作物から抜粋された言葉を写真に併置し、立ち上がる星野の世界観を堪能いただけます。
最後に伝えたかった精神的な世界を紹介
20年近くにわたる紀行で出会った極北の原住民との交流を経て、現代社会では忘れ去られつつある価値観を見出した星野は、彼らの暮らしを精力的に取材しました。極北の自然を超え人間の精神性をも捉える、星野の鋭敏な感性と広い視野が浮かび上がります。
星野作品が生まれた背景を多様な資料から紹介
当時取材に携行されたカメラ、移動に使用されたカヤック、本人に密着したドキュメンタリー映像、自筆原稿や掲載雑誌などを通して、極北で生まれた創作の背景や当時大きく発展した自然写真分野での星野の活躍に迫ります。
「ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい。」
『森と氷河と鯨』(世界文化社)より
ザトウクジラのブリーチング
展示構成 ●アラスカとの出会い アラスカを目指すきっかけとなった写真集『Alaska』には、星野の目をとらえて離さないある村の空撮写真が掲載されていました。本展では、その写真集とシシュマレフ村村長に宛てて送られた手紙の実物を展示し、星野道夫の旅の始まりを知らせます。 ●マスターピース およそ20年間におよぶ紀行を通して、極北を撮影した星野。彼の地のありのままの自然の姿が写し取られたマスターピースを大判のカラープリントにより一望いただけます。 ●生命のつながり 本章では、ザトウクジラ、カリブー、グリズリーなどを取り上げ、極北の過酷な環境のもとで生き抜く生命の躍動や一連のつながりを視覚的に示唆し、生きることそのものを問いかけます。 ●神話の世界 現地の人々との交流を経た星野は、厳しい自然のなかで生かされてきた人間の社会に貫かれる思想に強い関心を寄せ、晩年取材を重ねました。極北に広く伝わるワタリガラスの伝説やエスキモーのクジラ漁、ベーリング海を渡った先のシベリアを中心に展示いたします。 ●星野道夫の部屋 極北での自然写真家としての仕事を現存する資料からご紹介します。取材に携行されたカメラやブーツ、アラスカでの移動に使用されたカヤック、取材の様子が記録されたドキュメンタリー映像、取材時のセルフポートレートなどを展示いたします。さらに、自筆原稿や掲載雑誌を展示し、写真技術の進化に伴い大きく発展した自然写真分野における星野の当時の活躍に迫ります。 |
夜空に舞うオーロラと満月 山岳地帯に生きるドールシープの親子 白夜の北極海にクジラを追う |
「アラスカで出会った多くの人々が、今、再生しようとしている。世紀末を迎え、次の時代が見えてこない今、その淡い光は、かすかな希望である。そしてさまざまな人間の物語があるからこそ、美しいアラスカの自然は、より深い輝きを満ちてくる。人はいつも、それぞれの光を捜し求める、長い旅の途上なのだ。」 『ノーザンライツ』(新潮社)より 撮影:星野道夫 (c) Naoko Hoshino ※ 2018年8月23日(木)より一部展示替えがございます 関連イベント ●オープニングトーク 星野直子(星野道夫事務所代表)× 松家仁之(小説家・編集者) 日時:2018年7月14日(土) 15:00 - 16:30 会場:クレマチスの丘ホール 料金:当日有効の入館券のみ必要です。 参加方法:お電話にてお申込ください。 TEL:055-989-8780(水曜休) 本プロジェクトの中心的役割を担う両氏に特別ゲストとしてご登壇いただきます。展覧会の舞台裏から、当時の星野の撮影や執筆についてのエピソード、写真と言葉に傾けられた情熱や託されたメッセージまで、お話をお伺いします。 ●学芸員によるギャラリートーク 日時:7月28日(土)、8月11日(土)・25日(土)、9月8日(土)・22日(土)各14:15より(約30分間) 会場:IZU PHOTO MUSEUM 料金:当日有効の入館券のみ必要です。 申込不要(当日美術館受付カウンター前にお集まりください。) ●親子向けギャラリートーク 日時:7 月30日(月)・31日(火)各11:15、13:45より(約30分間) 会場:IZU PHOTO MUSEUM 料金:当日有効の入館券のみ必要です。(中学生以下無料) 申込不要(当日美術館受付カウンター前にお集まりください。) |
主催: IZU PHOTO MUSEUM、朝日新聞社 特別協力:星野道夫事務所 協力:富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 後援:静岡県教育委員会、長泉町教育委員会 |